こんにちは。札幌自学塾・新道東店の講師、五十嵐です。
入試直前特集として取り上げてきた合同証明の記述問題シリーズも今回で最終回となります。
前回の記事や塾長のYouTube動画講座も併せてご覧ください。ガンバレ受験生!
合同証明の記述問題~その6~
問6.
次の図のような△ABCで、点Bと辺ACの中点Mを結んだ直線と、点Cを通りBAに平行に引いた直線との交点をDとする。このとき、四角形ABCDが平行四辺形になることを証明しなさい。
・考え方
・解答例
・最後に
考え方
まずはゴールを確認したいのですが、今回の問題は今までに取り上げてきた問題とは少し違います。
最終的には、平行四辺形になることを証明するのが目標です。
実は、この問題も、今までと同様に三角形の合同を利用するのですが、気付かない人もいると思いますので、とりあえず手を動かしてみましょう。
いつもどおり、設問文から読み取れる条件を図にどんどん書き入れてゆきます。
まずは「辺ACの中点M」と書いてあることから、AM=CM(赤)です。
さらに「点Cを通りBAに平行に引いた直線との交点をDとする」と書いてあることから、BA//CD です。
平行線ときたら錯角を必ず確認! ∠BAM=∠DCM(青●)、∠ABM=∠CDM(青▲)です。
設問文の条件を一通り書き入れたので一度確認してみましょう。
なんとなく、△ABMと△CDMが合同になりそうな気がしませんか?
∠AMB=∠CMD(緑)または AB=CD(緑)と言えれば、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいと言えるので、△ABM≡△CDM が成り立つと言えそうですね。
平行四辺形になることを証明するのに、三角形の合同が何の役に立つの?と思うかもしれません。
ですが、合同な図形の対応する辺が等しいことを利用することで、BM=DM(紫)や、AB=CD(橙)と言うことができます。
ここで、平行四辺形の条件を思い出してください。
前回の記事で一部に触れましたが、平行四辺形の5条件を覚えていない人もいるかもしれませんので、ちょっと確認してみましょう。
まずは、平行四辺形の定義です。
・2組の対辺がそれぞれ平行である
次に、平行四辺形の定理ですが、辺・角・対角線の3つに分けて着目します。
・2組の対辺がそれぞれ等しい
・2組の対角がそれぞれ等しい(図1)
・対角線がそれぞれの中点で交わる(図2)
最後に、上記の組合せで次のようになります。
・1組の対辺が平行でその長さが等しい(図3)
このような順番でおさえると、5条件を全て覚えやすいです。
前回の記事で触れていなかったものは図にしておきました。
話を戻すと、AM=CM(赤)、BM=DM(紫)であれば「対角線がそれぞれの中点で交わる」と言えます。
または、AB//CD、AB=CD(橙)であれば「1組の対辺が平行でその長さが等しい」と言えます。
どうやら、BM=DM(紫)や、AB=CD(橙)と言うためにも、△ABM≡△CDM と言う必要がありそうですね。
では、改めて△ABMと△CDMの合同について考えてみると、対頂角が等しいので、∠AMB=∠CMD(緑)と言えます。
これに、前述した AM=CM(赤)、∠BAM=∠DCM(青)を併せると、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいと言えるので、△ABM≡△CDM が成り立ちます。
あとは、前述したように、合同な図形の対応する辺は等しいので、BM=DM(紫)や、AB=CD(橙)となります。
そして、AM=CM(赤)、BM=DM(紫)から「対角線がそれぞれの中点で交わる」と言えるため、四角形ABCDが平行四辺形になると証明できます。
または、AB//CD、AB=CD(橙)から「1組の対辺が平行でその長さが等しい」とも言えるため、四角形ABCDが平行四辺形になると証明しても構いません。
解答例
△ABMと△CDMにおいて、
仮定より、AM=CM・・・①
対頂角が等しいので、∠AMB=∠CMD・・・②
AB//DCより、錯角が等しいので、∠BAM=∠DCM・・・③
①、②、③より、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいので、
△ABM≡△CDM
合同な図形の対応する辺は等しいので、BM=DM・・・④
①、④より、対角線がそれぞれの中点で交わるので、四角形ABCDは平行四辺形である。
(別解)
△ABMと△CDMにおいて、
仮定より、AM=CM・・・①
対頂角が等しいので、∠AMB=∠CMD・・・②
AB//DCより、錯角が等しいので、∠BAM=∠DCM・・・③
①、②、③より、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいので、
△ABM≡△CDM
合同な図形の対応する辺は等しいので、AB=CD・・・④
④とAB//DCより、1組の対辺が平行でその長さが等しいので、四角形ABCDは平行四辺形である。
最後に
全6回の合同証明シリーズは以上で終了となります。
比較的簡単な問題を中心に掲載してきましたが、入試本番に出題される問題でも基本的な考え方は一緒です。
ただ、本番では、図形がより複雑になっているでしょうから、難しく感じるかもしれません。
いかに多くのことに気が付くことができるかが勝負となります。
今年の入試に限って言えば「相似」が出題範囲外なので、ほぼ確実に「合同」証明が出題されると思われます。
初見で解法の見当もつかない問題が出題されるかもしれませんが、それは他の受験生でも同じことです。
私の記事では、単純な解答例ではなく、どのように考えていくか、その道筋を詳しく示してきました。
落ち着いて、冷静に、正確に問題を理解するよう心掛けてください。
また、今回のシリーズで私が触れていないものの1つに二等辺三角形の性質を用いた問題があります。
こちらは、2019年の高校入試で実際に出題されておりますので、気になる方は過去問を解いてみてください。
最後に私から受験生の皆さんへ一言。
「試験本番の時間を楽しんで!」ヽ(´▽`)/
ここまでお付き合い頂いてありがとうございました。
参考:ハイクラステスト数学(受験研究社)